修理にとって最大の脅威は、もはや敵対的なハードウェアではありません。今日、多くの独立系修理ショップのオーナーが最も懸念しているのは、”パーツペアリング “として知られる電子機器製造のトレンドでしょう。この用語は、ユーザーや修理業者、そして修理のプロが、何十年にもわたって行ってきた修理方法で部品を交換することを妨げるため、電子機器メーカーが独占するソフトウェアの障壁を指します。使用不能になったデバイスからスペアパーツを回収し、他の再生可能なデバイスに移植することは、修理の現場において不可欠な行為である一方、パーツペアリングが拡大するにつれてその危険性が増しています。実際にパーツのペアリングは、私たちのデバイスを急速に侵食しています。
パーツペアリングがもたらす現実
あなたがiPhoneを持っていて、バッテリーが古くなったとします。友人が、画面が割れてボタンが壊れた、同じ機種のiPhoneを持っています。素晴らしい!その友人があなたに壊れたiPhoneを譲ると、バッテリーを回収することができるでしょう。しかしバッテリーの交換は完璧でしたが、デバイスの電源を入れると、次のような奇妙な通知が表示されています。”バッテリーに関する重要なメッセージ”、”このiPhoneにApple純正のバッテリーが搭載されていることを確認できません”と言うのです。
今、交換したバッテリーがApple純正の同じバッテリーであれば、なおさら奇妙に思えます。腹立たしいことに、この通知は何日も続き、何度も表示されます。「設定」メニューでは、使用可能な容量や充電設定にも不吉な警告が表示されます。「このバッテリーのバッテリーヘルス情報は利用できません。」


バッテリーを専門的にインストールしても、機能は失われ、絶え間ない警告に悩まされます。言うまでもなく、Appleが同じ作業を踏めば、この問題を解決するボタンにアクセスできます。そこに、パーツのペアリングという核心的な問題があります。
別のテクノロジー、例えば自動車が同じ状況にあるとしたら?ディーラーによる管理の下、自社ブランドを使ったオイル交換が必要だとします。週末にDIYでオイル交換をしたり、メカニックの仕事の一貫でオイル交換をした後、ダッシュボードに「不正なオイルに関する警告」が表示されます。するとメーカーが遠隔操作で「非純正のオイルチェック」警告を無効にして、次のオイル交換にはディーラー以外で行わないよう注意されます。
ばかげているように聞こえるかもしれませんが、私は知っています。「オイルのチェック」ランプは、車の運転とメンテナンスに不可欠です。他人が所有する製品の使用に、なぜメーカーが口を出すのか?このような仮説で例える車の悪夢は、他の多くの電子機器にとっては現実であると言えます。数年前、HPは偽のエラーメッセージでHP以外のブランドのプリンターインクの使用を妨害しました。GEの冷蔵庫のオーナーは、他社製の浄水器を使用するとエラーメッセージが表示されるため、その回避策を考える必要がありました。Keurig (キューリグ)でさえ、顧客のコーヒーメーカーに入れるコーヒーの銘柄をコントロールしました。
では、このデジタルロックの概念を家電製品以外の製品に広げてみましょう。サプライチェーンに必要な機器にデジタルロックを入れるとどうなるのか?農業分野では、以前からこのようなことが起きており、農家たちを大混乱に陥れる可能性があります。例えばジョン・ディア社のトラクター機は、機械にとって恐ろしい「リンプ・モード」(低速走行の緊急避難モード)を引き起こすような、様々な故障があります。エラーメッセージが修正されるまで、基本的な動作以外の大部分の機能が不能になります。安全対策を考慮すると、このモードは決して悪くはありませんが、ディア社がエラーを診断し解除するために使用するソフトウェアは、一般には公開されていません。修理ソフトウェアの使用を制限すると、ディア社は人為的に高い需要を生み出し、農家は必要なギアの修理を受けるためにウエイトリストに入ります。簡単な修理でも、ディア社とのアポを取り、修理を待つ間、作付けスケジュールが遅れたり、作物が畑で腐ることになるでしょう。一方、ディア社には競争相手がないため、このソフトウェアの問題を修正するために高い費用を設定します。この方法を使って所有者たちを苦しめているのはディア社だけではありません。OEMが必要なソフトウェアを人質にしている限り、同じことが繰り返されています。
では、なぜメーカーは顧客にとって不都合であったり、違法とされたり訴えられたりしながらも、修理や交換を企業内だけで管理しようと試みるのでしょうか?それは皆、同じ理由で修理に反対しています。その結果として、私たちは何を失うのでしょうか?それは選択の自由です。
シリアル化 = 交換不可

メーカーは長い間、ペンタローブねじの登場以来、修理を阻止する設計を選択してきました。DIY修理者は、独創的な回避策を見つけてきては対応しましたが、修理の前に立ちはだかる障壁はより複雑になり、デジタルに傾向しています。
「シリアル化は、品質管理、在庫管理、盗難防止など、さまざまな産業で使用されています。電子機器メーカーも同様ですが、物理的に部品自体に番号を印刷するのではなく、最近の電子機器の部品の多くは、部品自体にデジタルでシリアル番号が記録されています。
パーツをデジタル化されたシリアル番号に関連付けると、それだけでは修理に悪影響を与えません。ValveがゲームコンソールSteam Deckのパーツにシリアル番号を含めたとき、喜んだのは私たちです。しかし製造メーカーは、同一の公式パーツで交換した場合でも、シリアル番号を使って修理を制限する巧妙な方法を発見しました。デバイスの一部の部品には、「マイクロコントローラー」と呼ばれる米粒ほどの小さなマイクロチップが搭載されており、このマイクロコントローラーが計算を行い、シリアル番号などのデータを保存します。これらのマイクロコントローラーは、取り付けられた部品(バッテリーや顔認証スキャナーなど)と、デバイスの心臓部であるマザーボードとの間で情報を伝達し合います。

これまで長い間、マイクロコントローラーは、電子機器のパーツの中でも静かな存在でした。しかし現在、通常の操作の一環として、搭載された全てのチップにその識別番号をレポートするよう求めているようです。”一致しない”シリアル番号の部品が見つかった場合は?指紋スキャンやバッテリーヘルス情報のような機能に別れを告げ、しつこいエラーメッセージが表示されることになります。このように突然、良心的だったシリアル化が悪質な部品のペアリングへと変貌しました。
メーカーは、あなたが所有する自分のデバイスに、どこから入手した部品で交換するか意思決定する権限を持っています。新しいiPhoneのスクリーンやバッテリーが必要ですか?Apple(またはその正規販売店)に行き、正規の交換部品に割高な料金を支払わなければならなりません。特にAppleによるペアリングの酷い例は、iPhone 13のディスプレイを不正に交換すると、そのモデルのディスプレイは旧モデルのようにFaceIDイルミネーターに取り付けられていないにもかかわらず、FaceIDが機能しなくなります。そしてAppleがーいや、Appleだけが、そのデバイスのソフトウェアをリセットして新しいパーツを認識させ、エラーメッセージを解除し、機能を回復させることができるのです。

このポリシーが、非正規(サードパーティ製)部品に限定されたものであれば、多少の警戒心は理解できます。もちろんAppleは、低品質のバッテリーによってiPhoneの性能が劣化することを望んでいません。しかし、このようなエラーメッセージは、メーカーが製造した正規の部品でも発生します。この場合、唯一「欠けている」のは、Appleだけが管理する秘密のシリアル番号だけです。追記として、非正規の部品が公道を疾走する何トンものトラックに問題なく使えるのなら、あなたのスマートフォンにも十分使えると思いませんか?

パーツのペアリングに関する歴史を読み解く
部品交換のよるエラーメッセージの初期、私たちは疑いの目をAppleに向けていました。前述のiPhone 13の失敗を含めたこれらの問題の多くは、Apple自身で対応し、(数々の悪評の結果)修正しました。しかし、その後、このような問題は後を絶ちません。「この傾向は明らか」とChloé MikolajczakはEuropean Right to Repairキャンペーンのサイトに寄稿しています。「2015年には2つのiPhoneパーツしかシリアル化されていませんでした。しかし2020年にはその数は9つに増え、その大半は交換不可能、OEM以外では機能を失う可能性があります。」
他の携帯電話メーカーの製品でも、部品交換後に不審な挙動を示すことが発覚しています。2021年、YouTuberのHugh Jeffreys(ヒュー・ジェフリーズ)は、SamsungのGalaxy A51の部品を2つの端末間で置換した際、これを実証しました。交換した部品はSamsungの純正品であったにも関わらず、ジェフリーズが旧セキュリティ・アップデートにロールバックするまで、両機種とも指紋スキャンに関する機能が失われました。旧ソフトウェアでは、どの部品がどの携帯電話に最初から入っていたかに関係なく、指紋スキャンは突然正常に機能し始めました。 意図的な修理制限であれ、バグであれ、このような状況は修理に影響を与えます。しかし、バグならば修正できます。
私たちはジェフリーズとSamsung双方に連絡を取り、それがバグなのか機能なのかを確かめました。もしかしたら、この動画が公開されてから、ジェフリーズが作業した携帯電話に起こった問題は、将来のアップデートで解決されていたのかもしれません。残念ながら、部品交換とセキュリティアップデートのロールバックに使用した携帯電話は彼の手元にないため、それが事実かどうか確認することはできません。コメントを求められたSamsungの担当者は、次のように回答しました。
「私は、この修理に関わる具体的な変数や、ジェフリー氏からの根拠のないコメントについてはよく知りません。私がお伝えできることは、当社のスマートフォンにはパーツのペアリングは必要ないということです。修理が正しく行われれば、デバイスの機能が失われることはありません。」
私たちは、制限が意図的なものではなかったと聞いて安堵していますが、同時にパーツのペアリングによる制限が広く認知され、問題解決に関心を持ってもらいたいと願っています。アップデートをロールバックした後、携帯電話が完全に機能したことを考えると、ジェフリーズは正確な修理を行ったようです。この不具合の原因は一体何だったのか、修理後の携帯電話で、同様の不具合が発生しているのか、もしそうであれば修正する予定はあるのか、気になるところです。この件に関してSamsungからさらなる情報を期待します。

携帯電話以外でのペアリングの問題
パーツのペアリングは携帯電話だけに留まりません。Xbox Oneも海賊版防止策として、ディスクリーダーがマザーボードにペアリングされた状態で発売しました。ゲームコンソールは偽造ディスクをチェックし、マザーボードはディスクドライブ自体が改ざんされていないことを確認します。ここで懸念される残念な副作用は、Microsoft自身が述べているように、「Xbox Oneの光学ディスクドライブが壊れた場合、他のコンソールから取り出したディスクドライブを接続することはできません。つまり使えません。この2つはペアでなければならず、ペアリングできるのは当社の工場だけです。」機能するディスクドライブと、そのペアとなるマザーボードの両方を調達するのは容易なことではありません。Microsoftは交換部品を販売しておらず、サードパーティの販売業者も適切な認定を受けた部品を自前で作ることができないため、DIY修理業者にとっての唯一の選択肢は中古市場で手に入れることです。光学ドライブは故障頻度の高い部品なので、マザーボードとディスクドライブの両方が無傷で、部品として使えるほど壊れたXboxが見つかる可能性は限りなく低いと言えます。
その結果?機能するはずのゲームコンソールが電子廃棄物として加わります。
パーツのペアリングは認められるのか?
メーカーがシリアル化を通じて何かを得ているのは明らかです。一方で、消費者はどうでしょうか?メーカー側は、パーツのペアリングは自分たちにとって便利なだけでなく、誰にとっても必要なことだと信じているかもしれません。メーカーが管理する修理、ひいては修理追跡を可能にするシリアル化の論拠をいくつか挙げると、次のような点になります。”消費者は悪質な修理からの保護が必要”ということです。
“消費者は悪質な修理から保護される必要がある”
昨年、ネバダ州議会で多くのOEM(Google、Samsung、Appleを含む)を代表するロビイストが、修理を認可された技術者と純正部品に修理を限定することは、「審査を受けていない第三者」から消費者の安全を守るために必要だと主張しました。
セキュリティの懸念に関しては、Appleの正規サービスプロバイダやGoogle公式修理センターでも、その立場を利用する悪質業者と無縁ではありません。個人のプライバシーの問題、特にこのような例に照らし合わせると、消費者が管理される修理という重要な論拠となります。それが不可能な場合、Samsungリペアモードのようなオプションやバックアップとリセットを介して、デバイスを持ち込む前にデータを保護するための措置を講じると、誰が修理を行うかに関係なく、賢明な選択と言えます。Appleのようなプライバシーを重視する企業にとって、このような習慣を奨励することは大きな意味があります。

プライバシーといえば、指紋のようなバイオ生体認証データーを使用する部品についてはどうでしょうか?消費者による修理は安全なのか、それともOEM認定の修理が個人情報を保護できる唯一の方法なのでしょうか?特にセキュリティを重視する消費者は、交換部品が修正される可能性について懸念を抱いているかもしれません。先述したように、Microsoftはこの問題を海賊版の観点から懸念していました。携帯電話や個人用デバイスの場合、その懸念は個人データのセキュリティから生じます。例えば、改ざんされたスキャナーを依頼者のデバイスに移動させ、それを使ってログインする悪質業者がいれば、個人情報とセキュリティに問題が生じる可能性があります。
しかし、多くのスマートフォンが生体認証のロック解除前に、バックアップ方法としてPIN、パスワード、またはパターンの設定が必要であると、この個人情報には解決策があります。スキャナーを交換した後でも、デバイスは、実際の所有者を識別し、バックアップ方法でロックを解除することが可能なので、バックアップコードが入力されると、スキャナーをデバイスとペアリングし、機能を復元するソフトウェアにアクセスできるのではないでしょうか?Googleはすでに、交換用の指紋スキャナーをPixel端末に再ペアリングするソフトウェアを公開しています。Googleが提供するツールだけが唯一の解決策というわけではありませんが、Appleよりもはるかに修理しやすいです。つまり、メーカーはデバイスの修正に必要なツールを提供できることを示しています。多くの場合、メーカー側はこのツールを提供することを選ばず、修理に高額の値段を付けています。
“修理には危険が伴う”
また特にAppleが口にするのは、「アップル純正部品を使用した、訓練を受けた技術者が行う修理サービスの重要性」であり、顧客の安全に関する問題です。
もしAppleが言うほど修理が危険なものであれば、iFixitは存在していないでしょう。私たちは毎年、何百万という修理のお手伝いをしています。修理を安全に行う方法は、修理の安全なやり方を人々に教えることです。しかし、”危険性がある”非公式の部品についてはどうでしょうか?粗悪な電子機器で利益を得ようとする人々は常に存在します。しかし、アフターマーケットパーツに関するOEMの安全性への懸念は、多くの場合根拠のないものです。これらのパーツの多くは、純正品よりも品質が低いわけではありません。(純正品が必ずしも完璧でない場合もあります)中には、あなたのデバイスの製造メーカーと同じサプライヤーが製造しているものさえあり、Appleが同じ品質のパーツに対して提示する法外な価格に不満を抱くことになります。
そんなことはさておき、自問してください。もし純正の部品が簡単に手に入り、価格競争力もあれば、あなたはどちらの部品を買いますか?多くの消費者は、オンラインマーケットで一目見た時、どちらの部品を買うでしょうか?競争力のある価格であれば、すでに馴染みのあるブランド力を持つ有名企業のものを選ぶでしょう。しかし、価格が高ければ、人々は自然と有名ブランドから目を背けるようになります。Appleがアップルがペアリングで解決しようとしている問題を引き起こします。価格を下げれば、現在アフターマーケットの部品に頼るしかない顧客を引き込み、収益源を開くことができます。
本当の理由: ペアされていない部品はメーカーに損失を与える
なぜペアリングが必要なのか、技術的な理由を説明した後に残るものは何でしょうか?おそらく、この問題の大半は、セキュリティや安全性ではなく、金銭的な問題なのでしょう。シリアル化の “必要性 “については、正当性のある議論を繰り返せますが、結局のところ、メーカーのポケットにお金が入る道具であることに変わりはありません。
パーツペアリングのシリアル化については、経済的側面から様々な主張がなされています。修理をより難しく、より高価にすると、より新しい携帯電話の購入につながります。さらに盗難された携帯電話から採取された純正部品の市場や、偽造デバイス(保証詐欺に使われる可能性がある)、部品の市場を抑制するという議論もあります。しかし、一般消費者よりもメーカーの収益にとってより大きな問題であり、影響を受ける全関係者のために軽減することができるはずです。
メーカーの修理を阻止しようとするアクションが、自らの問題を悪化させている。
OEMが修理価格をつり上げたり、アフターマーケットやサードパーティーの部品について安全上の不安を煽ることは、こうした問題の多くを自ら悪化させています。純正パーツを手頃な価格にし、アフターマーケットの部品の品質に関するデータを提供することは、自分のデバイスを修理する能力を台無しにすることなく、こうした懸念を軽減するのに役立つはずです。そして最終的に、Appleのような環境問題に取り組む企業は自問自答しなければなりません。
アップルが互換性のない部品を製造したり、部品のシリアル化をすると、ユーザーや独立系ショップでの修理が難しくなります。そして、メーカー以外の修理が難しくなればなるほど、消費者は「正規の」修理店に頼る可能性が高くなり、修理代金がいくらであろうと、支払うことになります。あるいは、新モデルに多額の支払いをするかもしれません。Appleのようなメーカーは、自社製品の修理方法をコントロールして、ユーザーを自社のキャッシャーに誘導することに全力を尽くしていると言えます。
修理マーケットの独占
シリアライゼーションは、とりわけ修理を妨げる陰湿な方法です。ペンタローブネジや超強力な接着剤と比べて、最新でハイテクです。少なくとも、見たことのないネジには、工具を作る私たちにとって単純な解決策が見出せました。ネジの頭をよく見て、それに合うビットを作るのです。パーツのペアリングも同様に、私たちを修理から締め出そうとしますが、単に新しい工具を作り出すのではなく、メーカーしか手に入らない独自のパーツとなります。これに対応するための修理方法は、独立系修理ショップにとって、非常に高額で複雑なものとなります。
シリアル化されたリペア世界での、修理業者たちの現実

デバイスのペアリングされた部品を交換したいけれど、OEM公認の修理を払う余裕がない場合(もしくは地方在住の場合)、絶え間ないエラーメッセージから解放されて、完全機能を装備させるにはかなり高度な方法が必要になります。その一つが、マイクロコントローラーを元の部品から交換部品にマイクロソルダリングする方法、および/または特殊なツールの助けを借りてEEPROMと呼ばれるマイクロコントローラーの一部を再プログラムする方法です。デバイスのモデルや修理する部品によっては、これらの方法の1つまたは両方が必要になる場合があります。当然のことながら、このような修理は顧客と修理ショップの両方にとって、長期的で高価な修理になる可能性があります。
オプション 1: マイクロソルダリング
フランスのマイクロソルダリングスクール、The Repair Academyを経営するアレクサンドル・アイザックは、このような修理がいかに高額になるかを身をもって知っています。「独学で学ぶのは難しいため、習得にお金を払わなければなりません。工具にもお金がかかり、顕微鏡やはんだごてが必要です。実際に学ぶのに費やす時間の中で、スマートフォン数台を使い切ることになります。」さらに、消耗品とトレーニングの初期費用の後、「実際に顕微鏡の下で30分かけて、この極小のチップを交換します。」続けてアイザックは「その作業のために雇う技術テックですか?スクリーンやバッテリーを交換する人と同じ給料とは限りません。」
オプション 2: マイクロソルダリングなし
しかしアイザックによれば、ある機種の携帯電話ではマイクロコントローラーを動かさないと、その代償として悪質なエラーメッセージが表示されると言います。「私は数社の大手再生業者と仕事をしています。彼らは1日に1万~2万台の携帯電話を販売し、同時に大量の返品を受け付けています。エラーメッセージのせいで、携帯電話全体が返品されるのです。」修理サービスは、携帯電話自体の動作は正常で、エラーメッセージは機能上必要ないことを顧客に納得させる方法を考慮していますが、何かが正常でないことを伝える絶え間ない警告が表示されると、現状では不十分です。Backmarketの広報担当マネージャー、マリー・カステリはRepair.euのウェビナーで次のように説明しました。「メッセージは主に警告メッセージであって、機能には影響しないと説明しても、製品を返品する顧客が見られます。もしあなたが、一般修理店の顧客なら、二度とAppleストア以外の修理店に行かないでしょう。あるいは、修理ショップの評判を落とす悪いレビューを残すかもしれません。」
これら全てを回避しているのはAppleだと考えると、ここに真の要因があると言えます。費用やトレーニング、何時間もの練習、マイクロソルダリングのコツをつかむために使うスマートフォンなど含めて全て、回避しているのです。なぜなら、Appleは部品を自由に再ペアリングできるからです。それが可能なのは、Apple社とその承認されたサービスプロバイダだけです。つまり、修理業界の他の誰に対しても不利なことです。「私たちが超高級のツールと超ベテラン技術者を使って30分から1時間かけて行うことを、彼らは数回のクリックだけで完了できる。」とアイザック氏は言います。公平な競争条件と言えるでしょうか?
オプション3: 製造メーカー提供のものを利用する
Appleは独立系修理業者にオリーブの枝を差し伸べました。Apple以外の修理工場が純正部品を直接購入し、エラーメッセージや機能上、問題ないデバイスに修正できるシステムを導入しました。Appleにとっては大きな一歩ですが、今回のオリーブの枝は残念なほど短い。正直に言えば、小枝のようなものです。
アップルの認可を得るには、多くの難関を突破しなければなりません。独立修理業者(IRP)プログラムは、タイトルに “独立 “が付いていますが、まるで鎖に繋がれた様々な規定が付属しています。Viceがこのプログラムの契約書を入手したところ、加入を考える修理店にとってショッキングな条件が書かれていました。
住所や電話番号といった顧客の個人情報を渡すこと、修理の内容や使用できる部品の種類を制限すること、プログラムに参加している期間とその後5年間は、いつでも店舗を抜き打ちで監査することに同意すること、などです。オリーブの枝には棘があったのです。
IRPはAppleから270ドルのスクリーンを購入するために、そのような面倒なことをすべて行う必要があります。それに人件費、運営費、実際の利益を加えると、割高な修理になります。一方、Appleストアで提供する修理は、パーツを合わせて280ドルです。ここで唯一の勝者はAppleです。独立系修理店がマイクロソルダリングに頼らずにペアリングされた交換部品を手に入れるには、このような条件をクリアしなければなりません。なぜ私たちが早急にこのトレンドを阻止したいのか、分かっていただけますか?

Appleが提供するセルフサービス修理オプションも、同様にフラストレーションが溜まるものです。修理の品揃えは少なく、部品は高価で、特にオプションの工具レンタルを利用すると高くつきます。(レンタルしたものを当初の状態で返却しなければ、追加料金1,200ドルが加算)純正の交換部品が顧客に郵送されることは、修理店から遠く離れた場所に住んでいる人々、自分で修理して費用を節約したいと考えている人々にとって大きな恩恵となるでしょう。しかし、修理は誰でもアクセスできるものであるべきで、1,200ドルの保証金に賭ける余裕のある人々だけが利用できるものではありません。
ペアリングを人々の手に
そのためシリアル化は修理をより高価なものにし、私たちの選択肢を狭め、より多くの電子機器廃棄物を生み出します。しかしメーカーは、安全、セキュリティ、そして利益を懸念しています。どうすればこの問題を解決できるのでしょうか?
まあ、壊れたレコードのように聞こえるかもしれませんが、自動車修理の世界はこの問題を解決しています。修理は成り行きに任せれば良いのです。私たち技術者たちが修理を捻じ曲げる必要はありません。
常にディーラーにこだわる人もいるし、それは全く問題ありません。週末に子供たちとガレージでオイル交換をしたい人もいるでしょう。また時間がなく、通勤途中に街の整備店で作業を終わらせたい人もいます。重要なのは、選択肢があるということです。だから修理する権利があります。その権利が、オイルフィルター(車の修理)を置いて、割れたスクリーン(電子製品の修理)を始めた途端に存在しなくなるのはなぜでしょうか?
ソフトウェアロックによるシリアル化を公正に行う唯一の方法は、ますます偏在的になるテクノロジーと共存するために必要なツール提供です。誰でもペアリングの問題を解決するツールを使えると、ある種の危険性が潜むと言うならば、部品をシリアル化する「責任ある方法」は存在しません。そこでメーカーへの提案です。ペアリングのソフトウェアを誰でも使えるようにするか、あるいはペアリングを完全にやめることです。しかも将来のモデルでパーツのペアリングをやめるという意味ではなく、今発売されているモデルを指します。それが可能という証拠があります。ペアリングによって発生する機能の障害がソフトウェアのアップデートによって現れますが、同時にソフトウェアのアップデートで修正されています。
もし、独立系修理ショップや一般ユーザーが、メーカー独占のペアリング用ソフトウェアにアクセスできれば、この記事で説明した様々な障害の多くは解消されるでしょう。メーカーが小規模な修理業者を人質に取る力は弱まり、個人ユーザーは自分の手で修理ができます。健全な競争は、修理の現場全体を改善し、より多くの仕事を生み出し、廃棄物を最小限に抑えることに繋がります。
一方でメーカーは、自社のソフトウェアを一般に公開することはセキュリティ上、受け入れられないという相変わらずの主張を続けるでしょう。しかし、ユーザーにデバイスが適切に機能する手段を与える唯一のツールをわざと遠ざけるようなことは許されません。メーカー側がこの障害を作ったのだから、彼らが解決策を提供すべきです。つまり、パーツのペアリング解除、もしくは必要なペアリング用ソフトウェア(常識的なセキュリティ対策が施されたもの)への無料アクセス、あるいはセキュリティ問題としてのペアリングが本当に必須ならば、代替ソフトウェアの提供としうる回避策でしょう。代替案はすでに提案済みです。もしそのような提案が受け入れ難いなら、その理由を明確にすることです。私たちは、より賢明なデザイン能力があるチームから、もっと革新的な解決策が出てくることを望んでいます。iPhone14を見てください!このデバイスに施された新しい設計は、Appleの高い技術と先見性を示しています。今、私たちはその一部を、ソフトウェアロックよりもスマートな修正に活かして欲しいと願っています。もちろん、iPhoneのパーツがペアリングされていないことを望みますが、少なくともペアリングされた部品の数が増えていないことは、注目しましょう。
さてApple、SamsungやGoogleは巨大企業です。私たちのような小企業は、彼らのために働く必要性を感じるべきではありません。しかし、私たちがささやかな提案をするとしたら……
- 新たな収入源として、競争力のある価格の部品を提供する。
- パーツペアリングソフトウェアを使用する前に、ユーザーに利用規約に同意してもらう。
- 製品、部品、修理を自主的に登録するインセンティブを設ける。
- 修理しやすさを売りにする。環境保護団体やセキュリティー関連にこだわる人たちとも協調する。
未来をアンペアするー解き放つ
最終的には、メーカーはハードウェアのサポートを終了します。AppleのGenius BarsにはApple IIの代替部品は置いていません。初代ゲームボーイの新しいスクリーンの入手を任天堂に直接手伝ってもらいたいなら、頑張ってください。こうした「時代遅れ」となったデバイスは、サポートが終了したときに一斉に機能が止まるわけではありません。
よく手入れをしてメンテナンスすれば、メーカーのサポート期間を過ぎても、何年も、何十年も動き続けることがよくあります。時には、製造したメーカーよりも長く生き残ることさえあります。ある修理ショップから、シリアルパーツのためにXboxやPlayStationの修理ができず、バックルームに山積みになっているという話を聞くと、レトロなゲームコンソールというプロジェクトが愛され、長く機能し続ける可能性は低いことがわかります。パーツのペアリングは、私たちのデバイスの寿命を延ばす能力を停止させる可能性があります。
修理には常に決意と訓練と経験が必要です。しかしデリケートな部品や不可解なソフトウェア、そして修理の独占が、私たちから修理マインドを締め出そうとしています。最も決断力があり、経験豊富な修理テックたちでさえ、非常に専門的な訓練と高価なツールがなければ、太刀打ちできません。
私たちが求めているのは、あたり前に機能する修理の世界です。異なる部品が壊れた2つの同機種がある場合、少なくとも1つの機種を動作させるために部品を採取して、デバイスの主要機能を失うことなく、重要なヘルス情報を無効にすることなく、不安を煽るような通知が何度も表示されることなく、修理できるデバイス両方を捨てることもなく、修理できる世界です。
パーツのペアリングの芽を摘むことは、独立系修理ショップのビジネスを維持し、デバイスを可能な限り長く使い続け、増え続ける電子廃棄物を必要以上に増やさないようにするために極めて重要です。この闘いに参加するには、Repair.org(米国)をチェックする、お住まいの地域の修理擁護団体をここから見つけてください。修理する権利は私たちの住む街まで近づいています。その権利のために闘うことで、より早く実現することができます。
一条评论
本当に不当競争防止法、独占禁止法に抵触するように感じます。
提訴、または告発が必要かもしれません。
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