iPhone Pro Max 14が発売され、テックレビュアー達の間では「前モデルよりも良くなっているが、すぐにアップグレードするほどではないだろう」というのが一般的な意見のようです。これは一般消費者の傾向とも一致しています。技術革新の曲線が少し停滞してきているため、多くのユーザーはアップグレードを控えているようです。またデバイスをより長く使い続けたい方のために、iFixitではデバイスのバッテリーを交換するお手伝いをしています。
このデバイスの衛星機能は、砂漠のど真ん中や、ダイナミックアイランドの先端で足止めされた時に命綱となるでしょう。壊れていなければの話ですが。リペアビリティスコアを大きく改善させた通常モデルの14とは異なり、今年の14 ProとPro Maxは、修理がしやすいとは言えない過去のiPhoneアーキテクチャを引きずっています。
これまでPro Maxモデルの内部を開けば、Appleとそのパートナーが実現させた技術の進化を見ることができました。しかし今回の分解では、Appleが新たに搭載したものと、併せて残したものも確認できます。
分解タイム
まずは、お馴染みの進入禁止サイン、ペンタローブネジが出迎えてくれます。それから熱を当てて温め、お気に入りの吸盤ハンドルを掴んで内部を開きます。過去の機種に比べれば、接着剤の作業も少しは楽になりましたが、接着剤の強さは数値化しにくいので、確実なことは言えません。
ジャジャーン、Pro Maxは本のページをめくるように開きます。この開口手順は13シリーズも含めて過去5年間、変わっていません。一方で私たちが分解したばかりのiPhone 14は全く異なるやり方で開くことが分かりました。この新フラグシップモデルは、革新的なデザインから取り残されました。この問題は、背面ガラスの修理が非常に難易度の高いレベルにあることです。Appleが設定した14 Pro Maxの背面ガラスの修理費は549ドルもします。この価格設定は高すぎる気もしますが、難易度の高いプロセスを反映しています。
ディスプレイを外すと、すぐにA16チップが姿を現します。Bionicは、Snapdragonの性能を圧倒しています。A15と比較すると、初期のベンチマークでは、シングルスレッド性能で10%、マルチコア・タスクで17%の向上が見られました。Qualcommしか選択の余地がないAndroidユーザーたちは、耐えることしかできません。
異空間への挑戦
Pro Max (USモデル)の頭脳を取り出して、かつてSIMリーダーがあった場所に何が引っ越してきたか確認しますが…なんと、空っぽです。このようなスペースは(Oculusがタッチコントローラーに仕込んだように)イースターエッグを隠すための絶好の場所、もしくは ‘Hi iFixit’とメモ書きを入れる場所として最高ですが、Appleにとっては悪ふざけしすぎでしょう。
もちろん、このスペースが空いているのはUSモデルだけで、SIMソケットが搭載されているEUモデルの基板とSIMが搭載されていないUSモデルの基板を比較すると対照的です。しかし、このようなただ何もない無駄なスペースがあるのは、少し不自然でAppleらしくありません。プラスチック製のスペーサーは2×2のレゴブロックとほぼ同じ大きさで、重さは0.5gほどです。
気になるのは、その空いたスペースを次のモデルでどう活用するかです。長く不在のままである可能性はゼロでしょう。Steve Jobs氏が初代iPodを水槽に落とし、中から気泡が浮き出てくるのを見て、スペースを無駄にしているとチームを一喝したのは有名な話です。
私たちの意見ですか?このスペースは、MicroSDカードを搭載するには最適な場所でしょう。Appleはメモリを大量消費する48MPカメラと8Kビデオ撮影を展開しており、ストレージモジュールー特に128GBベースモデルを搭載するにはまたとない機会です。
1GBのMicroSDカードは現在20ドル以下で販売されています。画像用スペースが足りなくなったとき、携帯電話をアップグレードできたらどんなに素晴らしいことでしょう。新しい48MPカメラは直ぐにストレージが埋まっていきます- フル解像度であれば、一枚あたり100MBにもなります。簡単に交換できるカードで、お気に入りの曲を詰めたリミックス時代が復活するかもしれません。DJI Mavicドローンで撮影したビデオをロードして編集することもできます。このスペースをストレージモジュールとして使えれば、様々な可能性と耐久性を手に入れることができるでしょう。
もし私が2008年にタイムスリップして、未来は携帯電話に搭載された最先端カメラで48MPの高画質画像が撮れると打ち明けたらどうなるでしょうか?これを聞いた人は、驚嘆するはずです。しかしその一方で、画像を600枚保存すると内蔵メモリの半分以上を消費してしまい、さらに残念なことにメモリーカード用のスロットが付いていないと打ち明けたら?おそらく何て理解し難い後退だろうと、悲嘆するでしょう。悲しいことに、これが私たちの生きている世界です。
これをAppleが出来ないハードウェア上の理由はないはずです。MicroSDリーダーはぴったり収まります。そしてAppleはスロットに防水性能を加える方法を知っています。iPhone 14 ProとPro MaxにMicroSDカードがない唯一の理由は、ストレージのアップグレードのおかげで大幅な増収があるからです。
ストレージに課金するのは、まるで10年前のビジネスモデルのようです。Appleはサービスから数十億ドルにものぼる収益を上げていて、インストールベースの規模が拡大するにつれて、利益は増していきます。フラッシュメモリ市場は低迷する中、ストレージ価格がこれまでになく低廉しています。その恩恵で、他のパーツの価格上昇にもかかわらずデバイス本体の価格を据え置くことができています。
こんな私の提案に耳を傾けてくれるでしょうか?いや、もちろんないでしょう。確実に収益を増やし続けることができるからです。もしメモリ用のスロットを使うなら、このスペースを空っぽのまま残して、その分も私たちが払うデバイスの金額に含まれることになります。でも夢は持ち続けることができます。
X65 衛星通信の内部に侵入
Appleは、自社製品ライン全体をQualcommの最新5Gモデムに切り替えました。自社5Gモデムを製造するために何年も取り組んできたAppleのシリコンチーム(最初はIntelと共同で、その後は新しく獲得した社内チーム)は、フラストレーションを抱えているはずです。これまでのところAppleは成果を上げておらず、勝利をものにしたのはQualcommでした。それは非常に高額であったであろうたった4ナノメーターのパーツがもたらしました。Apple側の利点は、新X65がバンド53、衛星通信用のGlobalstarの2.4GHz周波数に対応していることです。何度も試しましたが、私たちはデバイス内部の衛星アンテナを確認することができませんでした。大まかな予想は付いていますが。iPhoneはすでにWi-Fi用の2.4 GHzアンテナがあるので、単純に既存のアンテナを使用している可能性もあります。
週末のロイターとの会話の中で、Appleは彼らのイノベーションはQualcommよりもより高いと自賛しているという話題が出ました。”iPhone 14モデルは、無線周波数コンポーネントにAppleによる完全設計のソフトウェアを上手く組み合わせて、衛星を介した緊急SOS機能を実現させた”と言うことのようです。そうです、おっしゃる通りです。その努力の甲斐あって、素晴らしい機能が実現しています。一方、Samsungも素晴らしいエンジニアたちが揃っているので、これから主流となるであろうSOS機能を追従していくのでしょうか?どうでしょう、AppleはGlobalstarの通信容量のうち85%を契約しているため、一つ言えることはSamsungは別の衛星会社を探さなければならないでしょう。
Appleのイベントの直前という絶妙なタイミングで、SpaceXとT-Mobileは技術提携を結んだことを発表しました。このメディアイベントは、Elon Musk氏の行動から見ても少し早まったように見えましたが、世界のどこに居てもSMS (ショートメッセージサービス)接続ができると公約しました。これが実現すれば革命的な前進と言えます。その前にSpaceXはStarshipを完成させ、7メートルもある巨大なアンテナを搭載したStarlink 2衛星を打ち上げなければなりません。AppleとGlobalstarは先発者としての強さがあります。
リペアビリティ
残る疑問はただひとつ、リペアビリティです。このスコアはどうでしょう?さて、残念ながらこのProモデルは、”普通”と見なされていたiPhone 14内部の隠れたリペアビリティ改善により、塵と化しました。14 ProとPro MaxはiPhone 13モデルの内部構造を引き継いでいるため、スコアも過去モデルのものと変わりません。
リペアビリティスコアが10のうち6なら、Proモデルとしては決して悪くありませんが、高価な背面ガラスを保護するケースの使用をお勧めします。私たちのリペアビリティスコアに基づいて、14Proは13 Proと同じスコアです。しかしAppleは改善方法を知っています。
すでにiPhone 14、14 Pro、14 Pro Maxの修理ガイドを公開しました。スクリーンからバッテリー交換まで、分かりやすい作業手順が掲載されています。iFixitのテックライティングチームは一般発売日に新モデルを受け取り、週末を返上してこの作業に取り組みました。Appleのサービスマニュアル公開が遅れないことを願います。
iPhone 14 Pro Max
2022年に発売されたAppleのトップフラッグシップモデル。9月16日に発売されたiPhone 14 Pro Maxは、6.7インチProMotion OLED、新チップBionic A16、トリプルリアカメラシステム、5Gコネクティビティを搭載している。iPhone 13 Pro Maxの後継モデル。
デバイスを表示先進的な内部設計からProが除外された理由は?
iPhone 14の進化した修理可能なフォームファクターに、今後の期待が高まります。まだこのモデルの分解をご覧になっていない方は、ぜひ読んでみてください。これこそ私たちを魅了する純粋な機械的革新で、このような携帯電話の内部を見たのは初めてです。Appleは背面ガラスを修理しやすくするために、今までのデザインを一から再考しました。とても素晴らしい技です。
しかし悲しいかな、その技をProまたはPro Maxに施しませんでした。The Vergeからの記事を引用すると、この新モデルこそ、iPhone 13S ProとPro Maxと呼べるでしょう。内側は13モデルと大した違いはないからです。この14 Pro/Pro Maxも背面ガラスの修理費用に549ドルもかかり、自分で交換するなら地元のDIYスペースやファブラボ、makerspaceに設置されている専用のレーザーカッターが必要です。(来年のProモデルに期待しましょう。)
では、なぜAppleは全く内部アーキテクチャが異なる2種類の新製品ラインナップを出荷するのでしょうか?私たちは幾つか持論がありますが、これは純粋な憶測です。
推測1: 2つの異なるチームが14シリーズを設計し、お互いにコミュニケーションをしなかった。 Appleは内部ファイアウォールで有名ですが、その可能性はかなり低いと思われます。 これまで発売されたiPhoneは、通常モデルとProモデル間で、設計に共通性が見られているからです。
推測2:何か新しいことをするときには、問題発生のリスクが伴います。サプライヤーからの入荷が遅れたり、歩留まり率が計画より低くなったり、ほんのわずかな変更で予想外のRF問題が発生し、直前まで把握できないことがあります。変更が多ければ多いほど、時間通りに出荷できるかどうかの不確実性が高まります。Tim Cook氏は、スケジュールに沿った出荷を強く望んでいます。そこでAppleはモデル毎の不確定要素を抑えたいと考えていた。その結果、ProモデルにはカメラやDynamic Islandを搭載し、ベースモデルの14にはフォームファクタを変更させました。そして来年には、これらのアップデートを統一させて、Proモデルをベースモデルと同じ高度なアーキテクチャに移行させることができます。
いずれにせよ、2時間に及ぶApple Eventでこのことに全く触れなかったのは興味深いことです。皮肉なことに、Appleのマーケティングチームはベースモデルの14をフラグシップのPro/Pro Maxと比べて、革新的に見せることを躊躇したのかもしれません。もしそうだとしたら、Apple Eventから修理しやすさの項目が排除されているのは本当に残念です。来年こそは修理の年になるのでしょうか?
最後に
私たちは長年にわたり、Appleの設計や修理プロセスと共に、浮き沈みを繰り返してきました。iPhoneの修理は、独立系リペアショップやiFixitのようなDIY修理サイトでも難しくなっています。紛れもなくiPhoneは世界で最も収益を上げている製品として記録更新を続けながら、Appleは独立系修理ショップに対して様々な障壁を投じています。Appleのマーケティング担当者は、iPhoneも壊れることがあると触れて欲しくありません。Appleのカスタマーサービスは、ユーザーとGenius Barを直ぐに繋ぐでしょう。最も忌々しいのは、デバイス本体と一つ一つの部品をペアリングすることです。つまり最も基本的な修理をするために、Appleから許可書を貰わなければなりません。
しかし変化の兆候も現れています。Appleはマニュアルとパーツを初めて公開します。(14シリーズのオンライン版マニュアルは現在未公開ですが、近日公開されると期待しています)通常の14モデルは革新的で修理がしやすく、来年のProとPro Maxにも継承されていて欲しい理想的なデザインです。もし将来、彼らに変化というカードが手元にあるとしたら、Appleのデザインチームが一晩で新モデル全体で新しいアーキテクチャーを導入しなかったことも理解しましょう。
しかし、長い道のりは始まったばかりです。修理コミュニティの多くのメンバーは、私たちがiPhone14を賞賛したことに懐疑的で、多くの修理を妨げる部品の制限や侵略的な警告を指摘しています。この画像に写っているのはApple純正のバッテリーですが、実際にAppleから新しいバッテリーを買わなければ警告を消すことはできません。
長年にわたって、修理できないと文句を言い続けてきた私たちにとって、Appleが見せてくれた新しいデザインを賞賛できる貴重な機会を喜んでいます。iFixitは常に皮肉ばかりだと言われても構いません。Appleが正真正銘のDIY修理を叶えてくれるなら。そうすれば、私たちは彼らへの評価を世界中に広めるでしょう。
翻訳:Midori Doi
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